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一般講演(ポスター発表) P1-240
ミチノクフクジュソウ(Adonis multiflora)は,土地利用の変化や園芸採集などにより生育地,個体数が減少しており,環境省レッドリストの準絶滅危惧種,岩手県レッドデータブックではBランクに位置づけられている。そこで本研究ではミチノクフクジュソウ保全の基礎的な調査として群落構造と生育立地環境について調査を行った。調査地は岩手県盛岡市近郊の玉山区川又地区および上田地区である。
植生調査はミチノクフクジュソウを含む植物群落で行い,畦畔など草地では2m四方,樹林地では5m四方の方形区を設定し,計40地点の調査資料を得た。調査は春季(2006年5月)と夏季(同年8月)に同一地点で行った。得られた資料はTWINSPANにより群落タイプを区分した。
群落タイプは10(A,B-1,B-2,B-3,C-1,C-2,C-3,C-4,D-1,D-2)に区分された。タイプAはアキカラマツで区分され,シラヤマギク,ナンブアザミなどが認められる二次草地,タイプBはヨシやツリフネソウで区分された湿性植物がみられる群落,タイプCはカキドオシ,カタバミで区分され,ヒメシダ,ヤブカンゾウなど畦畔・道ばたにみられる群落,タイプDはニワトコ,ヤマブキで区分される樹林地であった。
調査されたミチノクフクジュソウを含む群落は傾斜角度が30-60度と急な斜面に多く認められた(30地点・75%)。一方で平坦地にもタイプB・Cを中心に6地点(15%)調査された。調査地点をその立地している環境で河辺・水辺周辺・休耕田・畦畔・斜面林・斜面草地に区分した結果,植生タイプと立地環境の間には概ね以下のような関係があった。Aは現在も草刈りが続く斜面草地,Bは河辺や水辺周辺,Cは畦畔,Dは斜面林となった。当地のミチノクフクジュソウは多様な植生・立地環境で生育していることが理解できた。