| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-241
近年、河川改修によって直接的に植物の生育環境が破壊されるとともに、撹乱体制の変化で氾濫原が減少し、湿地の草原に生育する種が絶滅危惧種となる事例が多く見られている。
茨城県常総市の菅生沼畔には、オギを優占種とする湿地性の草原が広がっており、タチスミレなどの湿地に生育する絶滅危惧種の生育地の保全を目的とした火入れが行われている。本研究は、火入れが種多様性ならびに優占種オギや絶滅危惧種を含む植物に与える影響を明らかにすることを目的とし、火入れ前の2006年11月から火入れ後の2007年11月にかけてPenfound法植生調査及びオギの幹数、タチスミレ個体数、環境条件(相対光量子密度,温度等)を調査した。
調査地は場所ごとに過去の火入れ年数に違いがあるが、それぞれに火入れを行う区画(火入区)と火入れを行わない区画(焼残区)を作った。植生調査結果から算出したShannonの多様性指数(H’)を比較すると、解析を行った2007年5月,7月の結果はともに、火入区と焼残区の間に有意な差は見られなかった。
火入区と焼残区の単位面積当たりのオギ幹数を比較すると、これまで毎年火入れを継続してきた場所では、火入れが中断されると火入れ前年の同時期と比べオギの幹数の増加が見られた。
調査地で主要な保全対象となっている絶滅危惧種タチスミレについては、火入れ後春季の芽吹き時期に、火入区のほうが焼残区に比べて実生個体が有意に多く、火入れがタチスミレの更新の促進に効果的であることが示唆された。