| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-244
千葉県におけるニホンリスの生息分布域の変化とその要因を,1985年と2002年に環境省が実施したニホンリス分布データ(5kmメッシュ)を用いて調べた.説明変数には,メッシュ内の標高,傾斜,鳥獣保護区面積,道路密度,およびLandsat衛星画像をもとに土地被覆分類をして抽出した緑地,草地,水田,市街地面積割合,森林パッチ数等を設定した.その結果,リス「確認」の総メッシュ数は1985年の97メッシュ(全域の38%)から2002年の104メッシュ(全域の41%)へと増加しており,それらは主に北西部,県北中央部,房総丘陵南部において顕著だった.また,1985年には見られなかった,孤立して分布する野田個体群が確認された.これらの要因として,調査精度の向上および生息可能域の拡大が考えられる.一方,1985年のみ分布が「確認」された地域で特筆すべき点として,銚子および館山個体群の縮小・孤立化が見られたこと,また,県央部において北部と南部の連結性が弱まったことが挙げられる.この要因として,水田や市街化に伴う交通網の整備拡大による森林の減少・分断が考えられる.
以上のことから,千葉県ではリスの分布拡大が見られる一方で,局所的に個体群の孤立化が起こっていることが示唆された.しかしそれらの要因の特定については,モザイク状に様々な環境を含む5kmメッシュでは難しいことがわかった.発表では,以上の内容に統計的な解析を加えて報告し,広域スケールでのリス生息地評価の有効性を検討する.