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一般講演(ポスター発表) P1-246
水生植物は絶滅危惧種を多く含み,ため池はその生育場所として重要である。しかし近年はこれらの機能低下や管理体制の変化が進むと同時に,そこに生育する水生植物も減少,変化していると指摘される。そこで本研究では基礎的データの乏しい長野県中南部におけるため池の水生植物の保全策を検討するため,種組成と水質や人為的管理等の環境条件との関係を明らかにすることを目的とした。
調査は長野県中南部11市町村24地域のため池69ヶ所について2007年8月〜11月に行われた。植物分布調査はゴムボートを用いて,各池上の10箇所でアンカーを投下して水生植物を採取した。立地環境調査としては池中心部でpHおよびEC,DO,水温を測定し,各アンカー投下地点では水深と透明度を測定した。全有機炭素および全リン,全窒素については採水サンプルを持ち帰り,簡易分析法で分析した。管理状況については2006年にため池管理者に対する聞取り調査を行った。
水生植物の出現した池は39箇所で全体の約57%であった。出現種は9科15属21種で,環境省RDB種5種(イトトリゲモ,シャジクモ,フラスコモsp.等)および,長野県版RDB種14種(クロモ,オオトリゲモ,ホッスモ等)を含んだ。水生植物の出現頻度を重要度としてTWINSPAN解析を行った結果,ため池は12群落型に,出現種は5種群に分類された。種群では大きく,コカナダモとヒルムシロ,ヒシ等のため池の普通種からなる種群と,シャジクモとタヌキモsp.,ミズオオバコ,イトトリゲモ,フトヒルムシロ等の山間地や水田周辺の環境に生育する種群に分類された。当日の発表ではDCA序列化および,出現種と水質や池面積,池標高,水源からの距離等の立地環境条件との関係を考察する予定である。