| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-247

天竜川水系におけるツメレンゲとクロツバメシジミのハビタットへのオオキンケイギクおよび遷移の影響

*坪井勇人(信州大院・農),大窪久美子(信州大・農)

長野県天竜川水系の石積堤防や堤防草地には準絶滅危惧種のベンケイソウ科ツメレンゲ(Orostachys japonicus)と本種を幼虫期の主な食草とする準絶滅危惧種シジミチョウ科クロツバメシジミ(Tongeia ficheri)がみられる。また同所には特定外来生物オオキンケイギクが優占群落を形成し、在来の生態系を改変させる恐れがある。本研究の目的はツメレンゲとクロツバメシジミの保全の観点から、生育地の周辺群落、立地環境、生息状況の関係性を明らかにすることである。

ツメレンゲが確認された4地域で5つの調査ルート(総延長3375m)を設定し、50m毎(一部25m)の区画に分割した。クロツバメシジミの成虫については晴天の午前中に各ルートを一定速度で歩き、左右5m範囲で目撃した個体数を記録した(月3回、8〜11月)。ツメレンゲは地上シュート数を各区画で計測した(11月)。植生調査、環境条件調査は各区画2プロット(各4m2)、計148プロットにおいて行った(10〜11月)。

全調査ルートでクロツバメシジミの成虫はのべ129個体、ツメレンゲの地上シュート数は18683が確認された。ツメレンゲのシュート数とクロツバメシジミの出現数においては強い正の相関がみられ、相対光量子密度とツメレンゲシュート数、クロツバメシジミ出現数においては正の相関があった(p<0.05)。植被率、オオキンケイギクの被度と相対光量子密度、ツメレンゲシュート数、クロツバメシジミの出現数においては負の相関があった(p<0.05)。以上から、ツメレンゲ生育地へのオオキンケイギク等の侵入は相対光量子密度を低下させ、両保全種のハビタットを衰退させることが示唆された。

日本生態学会