| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-249
近年、チョウ類群集を用いて環境を評価する試みがさまざまな環境で行われるようになった。これらの研究により、チョウ類群集の多様性は適度な撹乱の働く林縁的環境でもっとも高いことが明らかとなっている。そこで本研究では、里山林縁部の植生管理がチョウ類群集に与える影響について評価するため、里山林を伴った近畿大学奈良キャンパスにおいて、間伐、草刈り等の管理を実施し、トランセクト法でチョウ類群集の調査を行った。近畿大学奈良キャンパスは奈良市郊外の矢田丘陵にあり、二次林および校舎造成による草地、調整池、庭園等からなり環境は比較的多様である。このような多様な環境を反映しキャンパス内には67種のチョウ類が生息している。しかし、二次林部分は造成以降ほとんど管理されることなく、クヌギやコナラなどの大木化が進行している。また、二次林と接する法面草地も放置され、クズやセイタカアワダチソウの繁茂により生物多様性が低下しつつあった。調査は里山林の間伐とそれに接する草地部分の定期的な刈取りを行った区、草地部分の定期的な刈取りを行った区および対照区を設け、チョウ類成虫群集の調査を行った。その結果、植生管理を行った区は対照区にくらべ種数や個体数が多く、種多様度指数H’が高くなる傾向にあった。これは、大木化した樹木の間伐による光条件の改善と、刈取りという定期的な撹乱の効果によるものと推察された。