| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-250
小笠原諸島母島においては,侵略的外来木本種アカギの侵入が固有の生態系に対する脅威となっている.2002年より森林生態系を再生するためのアカギ駆除事業が展開されている。アカギの駆除と在来林の再生を効率的に進めるためには、アカギ駆除後には速やかに在来種の更新を図り,周辺からのアカギ再侵入を防ぐ必要がある.小笠原諸島においては種内の遺伝的な撹乱や苗と共に運搬される外来土壌生物への懸念から,可能な限り植栽に頼らず天然更新による森林再生を図ることが好ましい.しかしながら,小笠原諸島においては種子散布鳥類の多様性が低く,外来クマネズミによる強度な種子食害があるため,天然更新の実現可能性を評価する必要がある.
そこで,本研究においては,アカギ駆除後に在来樹種が加入できない場所があるかどうかを明らかにするために,母島において優占度の高い在来高木種8種を対象に樹種ごとの散布能力を評価した。そして,アカギ駆除対象地域における毎木調査データ(林野庁所有)から得た母樹の空間分布に基づく実生散布の空間明示型シミュレーションを行った.
ベルトトランセクト上で2006年7月から1年間の実生加入数をカウントし,ベルトトランセクト周囲の開花・結実木のマッピングを行った.その結果,高木林の優占種であるシマホルトノキやアデクモドキの実生出現が母樹の樹冠下のみにしか見られないことが分かった.また,アカギの種子散布は近距離・遠距離ともに在来樹種より卓越することが分かった.母樹の空間的配置から実生散布パターンを予測する散布モデルを構築し,シミュレーション空間に再現したアカギ駆除事業地における母樹の分布を用いた散布モデルのモンテカルロシミュレーションを行った.これにより得られたアカギ駆除後の各樹種の実生加入パターンの予測から,アカギ駆除事業における在来種植栽の必要性を議論する.