| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-251

カヤ場の草原はどこに残ったか?旧版地形図の読み取りによるスキー場の草原保全機能の評価

*澤田佳宏(兵庫県大・自然研/淡路景観園芸学校),松村俊和(兵庫県・洲本農林),黒田有寿茂(兵庫県大・自然研/人と自然の博物館),藤原道郎(兵庫県大・自然研/淡路景観園芸学校)

スキー場の草原保全機能を量的に評価することを目的として,国土地理院の旧版地形図および環境省の植生図の判読をおこなった.調査対象範囲は1/5万地形図「村岡」全域および「香住」南半分(兵庫県北部の多雪地)とし,明治34年以降各年代の地形図および平成15年度の環境省植生図を用い,3次メッシュ単位での解析をおこなった.判読にあたって,植生図では凡例「ススキ群団」を草原として扱い,地形図では凡例「草地」および「荒地」を草原として扱った.明治34年の地形図では,まとまった面積(約6.25ha以上)の草原が出現するメッシュは,調査対象範囲全600区画中250区画あったが,昭和30〜40年代の地形図では約150区画,さらに平成15年植生図では35区画となり,かつての草原の大半は植林またはアカマツ林に置き換わっていた.平成15年の草原35区画のうち,27区画はスキー場,3区画は果樹園跡,2区画は牧場,1区画は放牧場跡に存在し,2区画は伐採跡と推察された.果樹園跡や伐採跡は遷移による樹林化が予想されるため,持続可能な草原の多くはスキー場にあると考えられた.スキー場の草原27区画の来歴をみると,20区画は明治時代より草原であった(ただし,うち7区画は昭和中期に一度樹林化している)が,残る7区画はスキー場開設のために森林が伐採されて成立した草原であった.またこれら27区画とは別に,植生図上で牧草地とされるスキー場が5区画あった.以上より,スキー場の中には,草原の保全の場として機能しているものがある可能性が示された.今後,来歴や現存植生に基づく質的な評価をおこない,スキー場での草原保全の方策を検討していく必要がある.

日本生態学会