| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-252

トンボ相調査それを指標とした棚田の維持・保全活動のあり方

宇都宮大学農学部農業環境工学科 *木村雄太郎,高橋俊守

近年、棚田の持つ多面的機能が評価・注目され、多様な維持・保全活動が行われている。また、環境指標生物であるトンボ種に注目した棚田の保全活動も行われている。しかし、トンボ種の調査は行われるものの、棚田を構成するどのような環境要素がトンボ種分布に影響するのかは明らかにされておらず、トンボ種に注目した棚田の維持・保全活動についてのあり方を検討するまで至っていない。

そこで、トンボ成虫分布と、その分布を規定する棚田の環境要素を明らかにすることを目的とした。栃木県茂木町小深の岩の作棚田を対象とし、棚田内に設置した調査地20地点において、定点観測法によるトンボ成虫分布調査及びトンボ種の分布に影響を与えると考えられる棚田の環境要素の調査を行った。調査により、5科12属17種のトンボ成虫を確認した。また、多変量解析の一つであるTWINSPANを用いて、出現種と調査地点をいくつかのタイプに分類した。分類タイプデータをもとに、どのような棚田の環境要素がトンボ成虫分布に影響しているかを解析したところ、棚田の相対照度、水温などがトンボ相の分布に影響していることが示唆された。

さらに、棚田とトンボの対応関係への理解が深まることで、棚田における環境の維持・保全活動を通じて、生息が期待されるトンボ相を予測することができるようになり、トンボを指標とした棚田の維持・保全方策の立案にも貢献できると考えられる。

日本生態学会