| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-254

恵那市におけるハルリンドウの個体密度と遺伝的多様性のデータを利用したHSIモデルの構築

*味岡ゆい,上野薫,寺井久慈,南基泰(中部大大学院・応生),米村惣太郎,横田樹広,小田原卓郎,那須守(清水建設(株)技術研)

種の保全のためには,個体数(個体群)とその遺伝的多様性を維持する環境条件を把握する必要がある.これまでに報告されたHSIモデルは個体密度や被度などに寄与する環境要因に注目したものであり,遺伝的多様性を目的変数とした報告は確認されていない.味岡ら(2006)は,恵那市に自生するハルリンドウの葉緑体DNA(trnST)に少なくとも5つのハプロタイプが存在することを確認している.本報告では,恵那市に立地する中部大学恵那キャンパスに1m×1mのコドラートを27地点設置し,ハルリンドウの開花期に各環境要因(14変数)の測定を行った.その値を用いて個体密度及びハプロタイプ数(遺伝的多様性)を目的変数としたHSIモデルの構築を行い,それぞれに寄与する環境要因を明らかにすることを試みた.

その結果,HSI(個体密度)=SIV1×SIV4×SIV6×SIV7×SIV8×SIV9×SIV12及びHSI(ハプロタイプ数)=SIV4×SIV9×SIV12×SIV13×SIV14(V1:斜面方位,V4:天空率,V6:土性,V7:土壌含水比,V8:土壌pH,V9:土壌EC,V12:裸地率,V13:リターの厚さ,V14:植物出現種数)が構築され,個体密度の多い生育地は森林内ギャップや草地のような比較的開放され,適度に湿った東側斜面であり,一方ハプロタイプ数が多い生育地は森林内や東海丘陵要素植物などの生育する湿地周辺部で,植物出現種数の多い場所であった.以上より,本調査地において個体密度とハプロタイプ数に寄与する環境要因は異なることが示唆された.

資料:味岡ら,岐阜県東濃地方で認められたハルリンドウの葉緑体DNA(trnST)のハプロタイプについて,植物地理・分類学会2006年度大会.

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