| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-257
近年、生物種の絶滅の主要な原因の一つとして、生息地破壊が挙げられている。これまでにも、種数面積曲線をはじめ観測データや数理解析により生息地の破壊と生態系の大まかな関係が研究されてきた。生息地破壊の問題でも格子サイトを破壊するという方法で破壊地の影響を推定する手法(ランダムサイト破壊)が開発され研究が行われてきた。これに関連して、私たちは生息地破壊の分断化の影響を調べるため、サイト間のつながりを切断する手法を開発し、これをパーコレーション(浸透現象)のサイトパーコレーションとボンドパーコレーションという関係から、それぞれ、前者をランダムサイト破壊、後者をボンド破壊と呼び研究を行ってきた。本報告は、モデル生態系として二種の餌捕食者系を取り扱い、この2つの生息地破壊に連続サイト破壊を加えた3種類の破壊について比較を行った結果を報告する。2次元の格子空間上で2種の生物を出生・死亡・捕食のプロセスをシミュレートし、この系に生息地破壊としてサイト破壊及びボンド破壊を適用した。生息地の破壊は、サイト・ボンドのどちらでも、捕食者が餌を捕食する相互作用を制限するようにし、餌の増殖には全く影響を与えないようにした。このモデルについて計算機実験による解析を行った結果、生息地破壊の比率Dが大きくなると、餌が増殖し捕食者は減少し絶滅することが分かった。その際、連続サイト破壊ではDが非常に大きな値でないと絶滅を起こさないが、サイト破壊(ランダム)とボンド破壊については、Dが小さな値で絶滅することが分かった。この二つの破壊には、分断化の効果が非常に大きく働いている。これより、生息地破壊による絶滅では、生息地分断化の効果が非常に重要であることが分かった。