| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-267

浸透移行性殺虫剤の昆虫群集に対する影響評価

大坂龍(千葉大・園),米田昌浩(環境研),所諭史(茨城大・教),Francisco Sanchez-Bayo(千葉大・園),岡田浩明(農環研),広木幹也(環境研),五箇公一(環境研)

農薬による水域生態系への影響については、室内毒性試験や野外試験およびそれらの中間に位置する室内マイクロコズム試験を組み合わせて評価する方法がガイダンス文書として1999年、国際的に公表されている。本国でも2002年、環境省による「我が国における農薬生態影響評価の当面の在り方について」で、水域生態系影響評価についての指針が示されている。しかし、陸域生態系に対する影響は、(1)農地が人為的な生態系であるため、その周辺地域も含めて評価対象として鑑みられてこなかった、(2)陸域生態系は水域生態系よりもはるかに生物種数が多く複雑である、(3)陸域生態系が移出入の激しい完全開放系であるといった点から知見の収集が全く不十分であり、評価手法が整備されているとは言えない。

本研究では農地外への流出がほとんどないと考えられる浸透移行性殺虫剤を使用し、(1)作物上の昆虫類、(2)農地外の雑草地帯(緩衝地帯とする)の昆虫類、(3)農地内外の地表徘徊性昆虫類の種数、個体数を調査し、これまで不十分であった陸域生態系において農薬が昆虫類に与える影響について基礎的なデータを収集することにより、効果的に評価する手法を模索した。

2006年から2007年にかけて4回に亘る調査で、(1)作物体上の昆虫類は目視によりカウント、(2)緩衝地帯の昆虫類は掃除機による吸い取り法、又はスイーピングによる網羅的な採集、(3)地表徘徊性昆虫類はピットホールトラップによる網羅的な採集を行い、農薬の処理区と無処理区との間の昆虫類の種数および個体数を比較した。本講演ではこれらの調査手法によって得られた基礎的なデータを報告し、農薬の陸域生態系に与える影響評価法を確立する足がかりとしたい。

日本生態学会