| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-272

在来タナゴ類減少への生息環境の悪化と外来種タイリクバラタナゴの影響

諸澤崇裕(筑波大・院・生命環境)

タナゴ類は環境省のレッドリストに14在来種・亜種中13種・亜種が記載されており、保全の必要性が高い分類群である。霞ヶ浦においてはアカヒレタビラ、タナゴ、ヤリタナゴ、ゼニタナゴの在来4種とカネヒラ、タイリクバラタナゴ、オオタナゴの外来3種が生息しているが、在来種が減少し、タイリクバラタナゴが優占種となっている。在来種減少の要因として考えられる生息環境の悪化と外来種タイリクバラタナゴの影響を把握するため、野外での魚類採捕と環境要因の測定ならびに低溶存酸素耐性に関する水槽実験を行った。

2005年には霞ヶ浦周辺126地点において4〜5月に1回と8〜10月に2回、2006年にはうち30地点において6〜11月に各月1回、魚類採捕と水辺の形状、電気伝導度、溶存酸素などの環境要因を測定した。採捕数の多かったアカヒレタビラ、タナゴ、ヤリタナゴ、タイリクバラタナゴについてGLMMにより解析した結果、在来3種は電気伝導度と負の相関を示したが、タイリクバラタナゴは正の相関を示した。さらに、タイリクバラタナゴのみ魚類の生息には不適とされる溶存酸素値4.0mg/l以下の地点でも出現した。水槽実験では35l水槽に同種のタナゴ類6尾を入れ、溶存酸素濃度が約1時間で0mg/lに減少するように亜硫酸ナトリウム1.5gを投入した。1尾、3尾、6尾が表面呼吸をした時の溶存酸素濃度を記録した。1種について個体を入れ替えて10回実験を繰り返した。実験の結果、タイリクバラタナゴは在来3種よりも低溶存酸素への耐性が強かった。

以上のことから、現在の霞ヶ浦におけるタイリクバラタナゴの優占は、タイリクバラタナゴが在来種よりも富栄養化や水質悪化などの生息環境の悪化に対する強い耐性を持っていることが要因の一つであると考えられた。

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