| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-273

水田の水生昆虫に対する水中ライトトラップの捕獲特性

*浜崎健児(農環研),本林 隆(農工大・農業生産技術),田中幸一(農環研),山中武彦(農環研)

水田は,米生産の場であると同時に,湿地に生息する様々な水生生物の代替環境としても重要である.しかし,栽培技術の近代化・効率化により水田環境が改変され,多くの種が減少する傾向にある.近年,これらの保全に向けた様々な研究が進められているものの,栽培管理と関連づけた研究は少ない.地域ごとに異なる栽培管理と生物種との関係を明らかにするためには広域での調査が不可欠であり,効率的・省力的な調査法を検討する必要がある.

これまで,水田に生息する水生生物の調査は,畦際や株間にコドラートを置いてすくい取る方法や,たも網を用いて一定距離をすくい取る方法によって行われてきた.しかし,サンプルのソーティング作業に時間と労力を要する,調査者によって採集効率が異なる,すくい取りによる水稲への影響から一般圃場での調査が難しいなどの問題があった.そうした中,浅水域に生息する水生生物の採集を目的として,発光ダイオード(LED)を用いた水中ライトトラップが開発・発売された.LED式トラップは,電源を含む光源ユニットがトラップ本体と一体化しており,従来の電球を光源とするトラップのように外部電源が必要ない.このため,設置および回収が容易であり,すくい取りのように水田内を攪乱する心配がない.LED式トラップの捕獲特性が明らかとなれば,水田における生物多様性評価への利用が期待できる.

本研究では,水田に生息する水生昆虫類を対象として,LED式水中ライトトラップおよびコドラートを用いたすくい取りによる調査を行い,捕獲された種および個体数を比較することによってLED式トラップの捕獲特性を検討した.

日本生態学会