| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-274
日本有数の水田地帯である新潟平野は、かつて湿生植物が繁茂する大湿地帯であった。農地開発後に湿田を利用してきたこれら湿生植物のなかには、圃場整備にともなう乾田化と除草剤の使用によって、地域絶滅に至った種もある。さらに近年、休耕田の増加により、水田は乾性多年草群落へと遷移し、外来植物も多く定着している。本研究では、休耕田を水位管理し、耕起の有無と組み合わせることによって、湿生植物群落の回復が可能であるかを検証した。
調査は新潟市で行った。人為的に湛水管理した大原(常時湛水)、丸潟W(中干し後は断続的湛水)、横戸(中干しまでの一時的湛水)では、6月に湛水を始め、湛水前には半面にロータリー耕と代掻き処理を行った。木山と丸潟Dは排水が良好な水管理無しの休耕田である。これらの休耕田に1m×1mの植生枠を最低20個設け、出現した植物の種名を記録した。湛水管理した休耕田には水位計を設置し、各植生枠の最大水深を測定した。
各植物種の出現頻度を因子とした休耕田の序列化では、第一主成分が休耕田の水分環境を表す指標であると示唆された。また、TWINSPANによる休耕田の分類では、湿生植物のタマガヤツリを指標種として湛水管理した休耕田と水管理無しの休耕田に分けられた。湛水管理した休耕田に出現した植物と水管理方法の違いおよび耕起の有無との関係では、常時湛水や深水が必ずしも湿生植物の出現に好適とは限らず、各植物種の出現は水分環境の違いに依存していることが示唆された。また、耕起はコナギをはじめとした比較的多くの湿生一年草の出現を促す一方で、乾性の一年草や越年草の発生を抑制した。休耕田を利用した適切な水管理と耕起によって、湿生植物群落の復元が可能であると結論づけた。