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一般講演(ポスター発表) P1-275
本研究では、兵庫県宝塚市西谷地区の里草地に生育するワレモコウの生育分布調査により、減少傾向にある里草地性の植物がどのような環境条件を選好し生育しているかを調べた。調査対象地の西谷地区は、棚田・平田、溜め池など様々な里地景観要素がモザイク状に分布し、里地里山景観が比較的良い状態で維持されている。様々な環境にある里草地を調査することで、ワレモコウの選好生育地の環境条件を明らかにすることを目的とする。
なお、本研究では里草地の定義を「水田や畑地、道端、溜め池、小川における畔や土手等の農耕地周辺の草地で、多様な草本性植物が生育地として利用している」とする(近畿レッドデータブック2001参考)。
対象種としてワレモコウを選んだ理由は、1)個体数が近年減少傾向にあること、2)生育分布に偏りがあること、3)ワレモコウの生育場所には他の貴重種が同所的に分布する傾向にあること、である。
調査は踏査により、里草地に生育するワレモコウの地上茎数・個体数を10m毎に計測した。時期はワレモコウの開花時期で、踏査距離は約173kmである。現地調査で確認したワレモコウの生育分布状況や調査地の地形(溜め池等)は、GIS(地理情報システム)を用いて入力した。以上のデータを利用して、標高・溜め池からの距離等の環境要因を説明変数にCPUE(10mメッシュあたりの発見ワレモコウ数)を応答変数として解析を行い、ワレモコウが選好する環境要因を特定した。その結果、ワレモコウの生育分布は標高と溜め池からの距離に影響を受け、標高が高いほど、また、溜め池からの距離が近いほど多く分布していることがわかった。
ワレモコウの選好度の高い生育地を把握し、その環境条件を認識することで、優先的に保全すべき場所やその環境条件を維持することができると考えられる。