| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-276
湿地の消失と環境の変化によって、湿地に生息する生物の多くが絶滅の危機に瀕している。このような湿地の危機を背景に、近年、国内外で湿地の保全、修復、再生のための活動や研究が進められている。特に近畿地方では、近畿圏の都市環境インフラのグランドデザイン(国土交通省2006)において、京都市南部の巨椋池干拓地と周辺低湿地が、近畿圏の水と緑のネットワークの重要拠点及び重点形成軸に位置づけられている。本研究では、巨椋池および周辺の横大路沼干拓地における水生植物の再生を目的として、土壌中に含まれる散布体の鉛直方向の発芽ポテンシャル実験を行った。巨椋池干拓地5地点と横大路沼干拓地4地点において、2007年3月上旬から4月下旬にかけて、直径3cmの土壌コアを地表面から100cmの深さまで採取した。土壌コアを10cmずつに分割して容器に撒き出し、0cmと5cmの湛水条件で発芽実験を行った。また、2007年7月と9月に、土壌採取地点の半径5m以内の植物の種名を記録した。実験の結果、種子植物30種、シダ植物1種、車軸藻類2種が発芽した。このうち絶滅危惧種は、カワヂシャ、ミズアオイ、ミズマツバ、ミズワラビ、シャジクモの5種であった。カワヂシャ、ミズアオイ、シャジクモは現地調査では記録されず、土壌中に保存された散布体から発芽したことが考えられた。土壌深度別の発芽種数および個体数は、地表面から20cmまでの土層でどちらも多く、60cmより深い土層では発芽個体がほとんどみられなかった。絶滅危惧種のうち、ミズマツバ、ミズワラビは20cmまで、カワヂシャ、ミズアオイは30cmまでの土層から発芽した。シャジクモは50cmまでの土層から発芽し、個体数も多く、高い再生ポテンシャルを持つことが示された。