| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-281

対馬におけるアキマドボタルの生息環境要因

*榎本大輔(明治大・農),倉本宣(明治大・農)

アキマドボタルは、日本では対馬(長崎県)のみに生息する大陸系の陸生ホタルである。長崎県は1966年に、対馬市厳原町阿須川流域の生息地を天然記念物に指定した。しかし指定当時から阿須川流域ではその生息数は減少し、その姿は見られなくなっている。現在までのところ、本種の生息状況の把握は行われていない。そこで本研究では本種の生息環境を把握することで、本種にとって好適な生息環境を解明し、対馬における本種の保全に関する基礎的な知見を得ることを目的とする。

調査地は長崎県対馬市厳原町豆酘、小茂田、内院、上対馬町豊で1地点、上県町佐護で2地点の本種の生息が確認された林縁の放棄耕地などで、計6地点を調査した。そして2007年10月6日と7日に各調査地において18:20から19:50までの90分間に渡って、10分ごとに1分間、本種個体数をそれぞれ記録した。また各研究対象地において3m×3mの方形区を各生息地の面積に応じて設置し、その方形区ごとに、植生、植被率、植生高、付着コケ類の植被率、リター堆積量、傾斜、土壌含水率、土壌硬度、陸産貝類の個体数(ヤマタニシ、ウスカワマイマイなど)について調査した。

結果として各調査地の本種生息密度と植被率、土壌含水率、陸産貝類の個体数の間にそれぞれ正の相関が、植生高との間に負の相関が認められた。本種が多く生息する場所はクズやヤブマオなどの葉の大きな草原性の植物が主に生育していた。また冬などには草刈などの管理が行われ生息地の植生全体の草丈が低く保たれていた。それにより葉の大きなクズなどの植物が直接地表面を覆うことで湿った空間が保たれていると考えられた。さらに斜面下部の林縁部であった生息地では湧水などによって湿った空間が形成されている場所も存在した。本種が多く生息する場所は湧水や人の管理によって本種のエサとなる陸産貝類が棲みやすい湿った空間であった。

日本生態学会