| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-282
里山は人間の関与によって長く維持されてきた二次的自然である.奥能登では過疎高齢化が進み,一次産業の担い手減少により里山的景観が失われつつあるが,今もなお鳥類・両生類・水生昆虫など里山の生物多様性が豊かである.奥能登,特に珠洲市はマツタケの名産地として知られていたが,近年,松枯れ病によるアカマツ林の減少,管理放棄による荒廃等により,生産量は往事の1/10以下となっている.奥能登の里山においてアカマツ林は(1)アカマツ林自体の価値(林業資源と景観),(2)マツタケ生産地,(3)野鳥等の生物の生息地という3つの重要要素をもつ.発表者らは今回里山のキノコ類に注目し,(1)奥能登地域のアカマツ林,コナラ林,シイ・タブ林,ブナ林を対象に発生するキノコ類のインベントリー調査を行い,キノコ相を把握するとともに,(2)マツタケ生産のための整備アカマツ林を対象に,キノコ相,アカマツの樹齢・胸高直径(DBH)・本数/ha・土壌の腐葉土層の厚みを計測し,マツタケ発生量との関係を明らかにした.
結果:(1)キノコ相:2007年7月から11月の調査により,4目25科54属118種582本のキノコを記録した.調査地の植生によりキノコ種が変化するとともに,植生多様性の増加につれてキノコ多様性が増した.
(2)マツタケ山のキノコ相とマツタケ発生状況:6地点(A-F,平均面積0.51ha,平均樹齢28.0年,平均DBH8.1cm,平均本数2440本/ha,平均腐葉土層2.8cm)を調査した結果,2地点でマツタケの発生を確認した.最多地点Aでは6本を確認した.本地点は,キノコ種数,平均DBH,腐葉土層の厚みが最小であり,マツタケ発生量とこれらには負の相関が確認された.