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一般講演(ポスター発表) P1-283
タナゴ類は,コイ科タナゴ亜科に属する魚類で,イシガイ科の貝類を産卵床として利用する事が知られている。国内に3属12種の生息が確認されており,鹿児島県の北薩地域は,アブラボテ(Tanakia limbata)の国内分布の南限である。二枚貝を産卵床として利用する生態から,外来種との間で競合や種間交雑が古くから問題視されてきた。タイリクバラタナゴ(Rhodeus ocellatus ocellatus)やオオタナゴは,外来生物法によって要注意外来生物に指定され,鮎や鰻の放流に伴い,国内移入種の問題も発生している。北薩地域でも,在来のアブラボテ以外に,ヤリタナゴ(Tanakia lanceolata)とタイリクバラタナゴの分布が確認されているが,詳細な調査は行われていない。そのため,本研究では,北薩地域を中心にタナゴ類の分布を調べ,同時に二枚貝の利用状況を明らかにすることを目的とした。
調査は,鹿児島県薩摩半島北部の河川で,2007年4月から行い,現在も継続中である。タナゴ類の捕獲はモンドリを用いて行い,イシガイ科貝類についても,目視及び鋤簾を用いて行った。
これまでに14河川で調査を行い,8河川で3種のタナゴ類を確認した。アブラボテは4河川に分布しており,うち1河川では今回の調査で初めて分布が確認された。タイリクバラタナゴも6河川で確認されたが,ヤリタナゴが採集されたのは1河川のみであった。イシガイ科貝類は,マツカサガイ(Prowodularia japanensis),ニセマツカサガイ(Inversiunio reinianus yanagawensis),ドブガイ(Anodonta woodiana)の3種が確認された。また,アブラボテとタイリクバラタナゴの2種が同所的に生息している河川があり,産卵床となるイシガイ科貝類をめぐって競合が起きている可能性が示唆された。