| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-286

琵琶湖在来魚の生息適地としての内湖の環境特性

*大石麻美子,柴田淳也, 山口真奈, 合田幸子, 奥田昇(京都大学 生態研センター)

近年、琵琶湖在来魚を取り巻く問題として、生息地破壊が問題視されている。琵琶湖在来魚は、生活史の異なる段階で琵琶湖(本湖)と、それに連続した生息地ネットワークを利用している。その形成要素に「内湖」がある。内湖とは、琵琶湖周辺に多数存在する衛星湖である。それぞれ異なった環境特性を持ち、在来魚の産卵場やレフュージア、仔稚魚の生育場としての役割を担っていた。しかし、干拓や圃場整備でその数や総面積は激減し、現存する内湖も浚渫や湖岸整備、水質悪化、外来魚の侵入等により環境が激変した。その結果、内湖は在来魚に対する本来の役割を果たせなくなり、在来魚の個体群維持が難しくなったと考えられている。中でも、仔稚魚の生育場としての役割は、より強く個体群維持に影響するであろう。そこで、我々は仔稚魚の生育場としての内湖の好適性に注目し、それが内湖の物理的環境、及び生物的環境として外来魚の多さと如何に関係しているか、また、より強く影響する要因を検討する。

2007年8月、物理的環境の特性に差異が見られる内湖を10箇所選び、各内湖のヨシ帯縁辺で在来及び外来仔稚魚の採集を行った。また、仔稚魚の成育に影響する環境要因として、ヨシ帯の水深、その縁辺の水深傾斜、水質(pH・DO・水温・濁度・透視度)を計測した。採集した仔稚魚は、同定を行い、個体数を計数した。加えて、体長・体重・肝重量を計測し、これらを仔稚魚のコンディションの指標とする。この指標を加えることで、種数・個体数だけに着目する以上に仔稚魚の成育を捉えることを狙いである。以上のデータを各環境変数で回帰分析し、在来魚に与える影響がより強い要因を明らかにし、内湖の機能回復において優先的に考慮すべき指標を考察する。

日本生態学会