| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-287
2005年より外来生物法が施行され、在来生物群集の復元を目的とした外来生物除去が各地で行われるようになった。しかし、外来魚の個体群動態に基づいた抑制手法は十分に確立しているとはいえない。京都市深泥池(面積約9ha,周囲約1km)は、北方系と南方系の多様な動植物が共存するため天然記念物に指定されているが、外来魚の侵入によってその生物群集は大きく変わってしまった。このため、深泥池では1998年からブーギルとオオクチバスを対象とした外来魚対策事業を実施している。
我々は、これまでブルーギルの除去努力量と個体群抑制との関係について、密度効果を加味した個体群動態モデルを用いて、捕獲努力量を調節することにより、順応的な外来魚の個体群抑制の対策を継続してきた。その結果、1998年に9,545尾だったブルーギル個体数は,2006年には210尾まで減少した。そして、シミュレーションの結果、2006年レベルの駆除努力を継続すれば、2009年の個体数予測値は20尾となり、2012年には90%以上の確率で根絶が可能となると推定されている。しかし、2007年は506尾に個体数が増加した。これは、1つの産卵床が繁殖に成功すると翌年の個体数は250-600尾となると予測されたことと一致し、繁殖成功個体が1ペアとなるような低密度な個体群では確率論的に大きく個体数が変動する。本研究では、低密度下での個体数変動と絶滅確率を個体群動態モデルを使って検討した。その結果、2006年レベルの駆除努力を継続し、ただし、産卵床を全破壊することかできないと仮定した場合、個体数は560尾以下に抑制ことは不可能であると予測された。また、根絶のためには4年連続で繁殖を完全に阻止する必要があることが分かった。