| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-288

異なる地盤高へのヨシの移植とその後のヨシ並びに巻貝相の変化

*梶原信輔(熊本大学・自然科学研究科)・赤坂尚子(熊本大学・理学部)・逸見泰久(熊本大学・沿岸域センター)

河口域などに見られる塩性湿地は、塩分が急激に変動する過酷な環境で、そこにはヨシ、フクド、ハママツナといった耐塩性の強い塩生植物や、ヘナタリ類、カワザンショウ類といった塩性湿地特有の底生動物が生育・生息している。しかし、近年、多くの塩性湿地は、護岸工事や埋立によって失われつつある。本研究は、護岸堤防建設によって埋没する塩性湿地の塩生植物を、隣接する裸地に移植し、その後のヨシの生育とそこに生息する巻貝相の変化を調査したものである。

ヨシの移植は、2005年6月に地盤高の異なる4ヵ所(地盤高の高い地点より、それぞれA〜D)で行った。その後、移植地と自然植生地において、ヨシの草丈、単位面積当たりの密度、穂を付けているヨシの割合を記録し、また、コドラートを用いてフトヘナタリ、クロヘナタリ、シマヘナタリの3種類の巻貝の種組成を調査した。その結果、移植地のヨシの草丈は、自然植生地と比較して低いものの、移植地間で大差は見られなかった。しかし、地盤高の高い移植地Aは他の移植地と比較して、単位面積当たりのヨシの密度は高く、穂をつけたヨシの割合も高かった。また、フトヘナタリ、シマヘナタリの密度も移植地Aで高かった。逆に、地盤高の低い移植地Dは、単位面積当たりのヨシの密度が低く、穂をつけたヨシは皆無であったが、クロヘナタリは多く生息していた。これにより、地盤高の高い場所は、ヨシの生育に適し、フトヘナタリやシマヘナタリが多く生息できること、逆に低い場所は、ヨシの生育は適さないが、クロヘナタリの生息に適する塩性湿地が形成されることがわかった。

また、以上の結果は、地盤高さえ確保できれば、裸地へヨシ移植は有効で、同時にフトヘナタリ、シマヘナタリなどの希少巻貝の生息地の創世にも有効であることを示唆している。

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