| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-290

山形県における絶滅危惧種イバラトミヨ雄物型の生息環境と営巣特性

*伊藤聡・渡邊潔・渡邉英治(山形県環研セ),佐藤恒治(山形県森林課),河内正行・大井明彦(山形県内水試),高田啓介(信州大・理),丸吉繁一(山形県文化財保護室)

イバラトミヨ雄物型は、秋田県の横手盆地、山形県の山形盆地の湧水とその流出河川にだけ局所的に分布することが知られており、環境省及び山形県により絶滅危惧IA類(CR)に指定されている。しかし、本県に生息するイバラトミヨ雄物型の生態に関する調査はほとんど行われていない。そこで、イバラトミヨ雄物型の保護対策に資するため、山形県天然記念物として地域指定されている最上川水系の2箇所の湧水群とその流出河川(高木と大富)において、2003〜2007年にかけて、その生息環境と営巣特性、個体数変動等について調査を行った。

高木の生息環境は池であり流速は殆どなく、水温は年間約11〜16℃前後で安定していた。大富の生息環境は河川で流心の流速は約0.3〜0.6m/sであり、水温は多くの箇所で年間10〜14℃前後と比較的安定していたが、最高水温が18℃を越える箇所も存在し、人為的な影響が考えられた。営巣は、両地点とも3月初旬から9月初旬まで確認された。最も多く営巣が確認された時期は、5月初旬〜6月中旬までであり、産卵盛期はこの期間であると推定された。高木の営巣密度は、岸の延長1m当り最高で1.8個であったが、大富は0.4個と低かった。2007年の両地点の個体数推定密度は、大富で約0.1尾/m2、高木で約12尾/m2であった。大富の個体数密度は、過去3年間約1尾/m2前後と安定していたが、2007年はこれまでの約1/10に激減しており、絶滅の危険性が示唆された。両地点はともに湧水起源であるにもかかわらず、生息環境と営巣特性には様々な違いが認められたことから、それぞれの状況に対応した異なる保全方法を講じる必要があろう。  

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