| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-293

釧路湿原シラルトロ湖における沈水植物の分布と環境要因との関係

*岡本実希,西廣淳(東大・院・農),赤坂宗光,中川惠,佐治あずみ,高村典子(国環研)

沈水植物は浅い湖沼において透明度の高い状態を維持し、また、動物群集に生息場や餌を提供するなど、淡水生態系において重要な役割を果たす。釧路湿原東部のシラルトロ湖は、平均水深が1.5mの浅い湖である。1991年には15種の沈水植物が確認されたが、2003年にはそのうちの絶滅危惧種を含む5種が確認されず、3種は出現が稀であった。そのなかで、浮葉植物のヒシは分布を拡大している。本研究では、沈水植物の保全に向けた基礎的知見として、沈水植物の分布と環境要因との関係を知ることを目的とした。

シラルトロ湖を250mメッシュに区切った交点45地点と、湖に接する河口5地点で、2007年8月に、植物の種毎の現存量・最大長と水深、光、水質等の環境要因を調査した。その結果、13種の沈水植物が確認され、うち6種は出現が稀であった。50地点中、19地点は沈水植物が、20地点ではヒシが優占し、11地点では植生が確認されなかった。解析にはCARTを用いた。結果、沈水植物の総現存量は、水深1.0m以上で、湖底の相対光量0.3%以上で多いことが示され、それぞれ、ヒシの優占地点よりも深く、植生なしの地点よりも明るい環境であった。

次に、出現回数が多い沈水植物5種について、各種の現存量を目的変数に解析した。結果、ホザキノフサモは1.2m以上の水深で、反対にエゾヤナギモは0.6m以下の水深で現存量が多かった。また、クロモやマツモでは、水深よりも湖底の相対光量と関係が高かった。このように、種間で選択される変数や値に違いが見られた。これらのことから、沈水植物を保全するためには、沈水植物全体とともに、種毎の生育環境の違いにも考慮する必要が示唆された。

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