| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-002

ネジバナはなぜ捩れているか−花序構造と他家受粉促進戦略−

*岩田達則(神戸大・人間発達環境学研究科),長崎摂(豊中市立第十四中学校),石井博(東大・農学生命科学研究科),丑丸敦史(神戸大・発達科学部)

ネジバナ(Spiranthes sinensis)は螺旋状の花穂を持つが、その捩れの程度は個体により多様である。強く捩れて花を全方に向けるものから、全く捩れず花を一方にしかつけないものまで存在する。結果、ディスプレイサイズ(同時に咲かせる花数)が同じでも、花を向ける方向や隣り合う個花間の距離、個花のまとまりの大きさなどが異なり得る。このような花序の捩れによる花の配置の差異は、送粉者の誘引にどのような影響を与えているのだろうか?この問いに答えるため、野外のネジバナ集団における花粉塊の有無と、花序の捩れ強度やディスプレイサイズ、個花サイズの関係が調べられた。結果、花粉塊の持ち去りは、捩れが弱いうちは花序の捩れ強度と正の相関を持つが、捩れが強くなると負の相関を持つことが明らかになった。

捩れが強い場合、短い間隔で花が花茎に隠れるため、細かく分断された小さな花のまとまりが多数配置される。一方、捩れが弱い場合は、大きな花のまとまりが少数できることになる。花粉塊持ち去りと捩れ強度に負の相関関係が存在することは、ディスプレイサイズが等しい場合でも、花をまとめて配置するか分散して配置するかで、送粉者に対するアピールが異なる可能性があることを示している。

一方に花を向けた場合、誘引する範囲が限られ訪花頻度が減少することが予測される。よって花の向きが限定される捩れの弱い花序でも、同様に訪花頻度が小さくなる可能性がある。この仮説により、花粉塊持ち去りと捩れ強度の正の相関を説明できるかもしれない。

人工花序を用いた訪花実験の結果を加え、花序の捩れが送粉に与える影響について議論する。

日本生態学会