| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-005

伊豆諸島において同所的に生育するクサギ属2種(Clerodendrum trichotomum & C. izuinsulare)の訪花昆虫相の比較

*水澤玲子(東邦大・院・理),長谷川雅美(東邦大・院・理)

伊豆諸島の新島には花糸長の異なる2種のクサギ属(クサギ、シマクサギ)が生育する。シマクサギは伊豆諸島の固有種で、その花糸長(雄蕊と雌蕊の長さ)はクサギよりも約1cm短い。クサギの送粉者は大型の黒色系アゲハとされるが、花形態はしばしば送粉者の形態を反映することが知られており、シマクサギの送粉者相はクサギとは異なると考えられる。両種が同所的に生育する利島では送粉者を共有するとされているが、開花期全体を通した訪花昆虫相の報告はない。

本研究ではクサギとシマクサギの開花時期の違いを確認するために、2007年の7月から10月にかけて新島において、観察木中の開花個体の比率を4-10日おきに記録した。同時に昼および夜の訪花昆虫を観察した。

クサギの開花開始は7/19、シマクサギの開花開始は7/31であった。開花期全体の昼の訪花昆虫とその頻度は、モンキアゲハ(22.4%:クサギへの訪花頻度、12.7%:シマクサギへの訪花頻度)、カラスアゲハ(14.5%、7.3%)、イチモンジセセリ(2.5%、10.7%)、Macroglossum spp.(11.4%、23.4%)、クマバチ(14.1%、23.0%)、Amegila sp.(8.8%、6.1%)、その他の蜂(19.4%、10.0%)、その他(7.0%、6.8%)であった。夜の訪花昆虫とその頻度はスズメガ(57.0%、35.7%)、その他(43.0%、64.3%)であった。黒色系アゲハのシマクサギへの訪花頻度は23.3%であり、クサギへの訪花頻度(37.9%)よりも有意に低かった。

黒色系アゲハのシマクサギへの訪花頻度が低かったのは、黒色系アゲハの出現期とシマクサギの開花期が一致しないためであると考察した。これらの結果から、シマクサギは過去に送粉者として黒色系アゲハを利用できない時代を経験した可能性が示唆された。

日本生態学会