| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-012

クリの訪花昆虫に付着した花粉一粒ずつのDNA分析による送粉パターンの解析

*長谷川陽一, 陶山佳久, 清和研二(東北大院・農)

一般に、一種の植物には複数の種類の昆虫が訪花することが知られている。従って、一種の植物の送粉に複数種の昆虫が貢献するジェネラルな送粉系が期待される。しかしながら、多くの訪花昆虫のうち実質的には特定の昆虫種のみが送粉に寄与するという報告もある(スペシャルな送粉系)。このような訪花昆虫と植物種との関係を把握するためには、昆虫が運搬する花粉組成について明らかにすることが望まれる。しかし、その種内レベルの組成(自家・他家花粉等)についてはこれまで技術的な制約によりほとんどわかっていない。そこで本研究では、クリに訪花する昆虫の種組成と頻度の調査を行うとともに、訪花した昆虫の体表に付着した花粉1粒ずつについてDNA分析を行うことにより、クリの訪花昆虫の送粉特性を評価した。

クリへの訪花頻度は、ハエ・アブ類とマルハナバチ類、小型甲虫類が高く、雌花への訪花頻度(雌花への訪花数/雌花+雄花への訪花数)は小型甲虫類(14.4%)>ハエ・アブ類(4.9%)>マルハナバチ類(1.2%)の順に高かった。次にこれらの訪花昆虫の体表付着花粉を採集し、マイクロサテライト11座の遺伝子型を調べて各花粉粒の花粉親を特定した。その結果、他家花粉率(昆虫を採集したクリ個体とは別個体の花粉の比率)はマルハナバチ類(66%)>ハエ・アブ類(34%, シマハナアブを除くと51%)>小型甲虫類(4%)の順に高かった。以上の結果から、3つの昆虫分類群のいずれもがクリの他家受粉に貢献している可能性があると考えられたが、雌花への訪花頻度か他家花粉率のどちらかが極端に低いマルハナバチ類や小型甲虫類の貢献度は、ハエ・アブ類に比べて相対的に低い可能性が示唆された。本発表ではさらに、訪花昆虫ごとの花粉散布パターンについても言及する。

日本生態学会