| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-013
採餌中の社会性のハナバチは、目標とする蜜源植物の探索効率を高めるため、特定の形質を持つ花に対して明確な探索像を持ち、選好訪花すると言われている。このような社会性ハナバチの訪花行動は、植物の繁殖に影響を与えると考えられているが、これに関し、主に議論されてきたのは訪花昆虫の獲得を巡る種間競争等の問題が中心であった。ここで問題となっているのは比較的大きな(人間の目でもはっきりわかる)形質の差である。我々は、社会性ハナバチに送粉を依存している植物では、種内変異のような比較的小さな差でも強い選択圧となる可能性があると考えている。しかしながらそのためには訪花昆虫が比較的小さな花形質の差を認識でき、それに基づいて行動を決定している必要がある。そこで、実際に花形質の種内変異によって訪花行動が影響をうけるかを確かめるため、訪花昆虫としてセイヨウミツバチ、植物として Brassica rapa (アブラナ科)の、花弁の形質(紫外線吸光部位の面積)が比較的近い2系統(組合せA-B)および異なる2系統(組合せC-D)の2種類の組合せを用い、閉鎖網室内で訪花実験を行い、その行動を観察した。閉鎖網室は9m×9m×1.8mの大きさで遮光率10%のものを、セイヨウミツバチは約300頭までワーカー数を減らした人口巣箱を用いた。どちらの組合せ実験でも両系統の植物個体を同数、等距離で配置した。組合せA-Bと組合せC-D でのミツバチの行動を比較したところ、どちらの組合せでも特定の系統に選好性を示す個体は存在したが、組合せC-Dで選好性を示す個体の割合がより多かった。この結果はミツバチが系統間差を認識し、特定の花形質を選択していることを示唆する