| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-016

大型種子をもつ樹木Canarium euphyllumにおける散布後の種子の運命:場所特異的な小型哺乳類による種子食害

*北村俊平(立教大学・理), 湯本貴和(総合地球環境学研究所), Pilai Poonswad(マヒドン大学・理), 鈴木俊介(滋賀県立大学・環境科学)Prawat Wohandee(タイ王立森林局)

熱帯林の樹木の更新過程において、種子がどこに散布されるかによって、その後の種子の運命は大きく異なる。しかし、野外で動物によって種子が散布された場所を特定し、その種子の運命を追跡することは困難である。タイ国カオヤイ国立公園において、大型種子をもつカンラン科Canarium euphyllumの種子散布者は大型の果実食鳥類であるサイチョウ類であり、口から種子を吐き戻して散布する。本研究では、サイチョウ類がC. euphyllumの種子を散布する可能性の高い同種結実木6個体、他種結実木6個体、止まり木4個体の計16箇所の実験区を設定し、実験的に設置した種子の運命を追跡することで、サイチョウ類による種子散布の有効性について検討した。各実験区に糸付け法を用いてマーキングした50個の種子を10個ずつ5箇所に分散して設置し、設置した種子を持ち去る動物を自動撮影装置により特定し、持ち去られた種子の運命を追跡した。各実験区間の種子の持ち去り率を比較した結果、同種結実木では有意に持ち去り率が高く、4ヶ月以内にほとんどの種子が持ち去られた。一方、他種結実木や止まり木に設置した種子の多くは22ヵ月が経過しても持ち去られず、一部はその場で発芽していた。種子が持ち去られた実験区では林床性のげっ歯類、インドシナシマリスMenetes berdmoreiまたはオナガコミミネズミLeopoldamys sabanusが頻繁に撮影され、これらのげっ歯類に持ち去られた種子のほとんどが種子食害を受けていた。そのためサイチョウ類に種子散布されることで、結実木周辺に生息する可能性が高いこれら2種のげっ歯類による種子食害を減らす効果が期待された。

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