| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-020

アカメガシワを食べる鳥の地域比較,年比較

福井晶子(日本野鳥の会),上田恵介(立教大学)

果実の採食者相に地域差や年差はあるのか、それは果実の成熟や渡り鳥の移動のフェノロジーとどう関係しているのかを明らかにするために、アカメガシワ果実を対象に、2005年に山形県から鹿児島県までの22カ所の調査地点で、2006年には4カ所で、果実の採食者を観察した。採食者にはヒヨドリ、メジロといった種子を散布する鳥種だけでなくキジバトなどの種子を破壊する種やソウシチョウといった外来種も含まれ、これまでに23種が記録された。しかし、一調査地点での最高記録種数は11種(2006年の山形)で、アカメガシワ果実の採食者相には地域差や年差があった。アカメガシワ果実は、南の地域で早く成熟し、北の地域では遅い傾向があった。2005年には比較的南に位置する静岡で、留鳥に加えて夏鳥のキビタキによる採食が観察された。一方、同年に最北の山形では留鳥に加えて冬鳥のジョウビタキとシロハラによる採食が観察された。つまり、果実の成熟は南で早く、逆に渡り鳥の移動は北で早く、果実と渡り鳥の移動のフェノロジーの組合わせは、地理的な位置によって異なる。これらのフェノロジーの組み合わせにより、果実採食者相の地域差が生じると考えられた。さらに、コゲラ、メジロは林内から林縁、ヒヨドリやスズメは畑など開けた環境で多く観察される傾向がみられ、採食者相はアカメガシワの生育している環境にも左右されると考えられた。採食者相には年差も認められた。各調査地点における調査開始日や気温の変化傾向は両年とも類似していた。しかし、採食者の種数と採食頻度はともに2005年に比べて 2006年で多かった。その理由は我々の調査では不明であったが、鳥類の食べる果実全体の豊凶の影響を受けている可能性が考えられた。

日本生態学会