| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-023
一般に、森林面積が減少すると森林性鳥類は密度や多様性が減少する。また、餌資源や営巣環境が貧弱な人工林に接する割合が高い(細長い)天然林では、森林性鳥類の密度や多様性が減少することが考えられる。そのため、面積の減少した森林や人工林に接する割合が高い天然林は、鳥散布樹木が果実食鳥の減少に伴う更新の制限を受ける可能性がある。このような関係を調べるため、天然林である小川試験地(約100ha)と、尾根沿いと沢沿いに細長く残され、約30年生の人工林に広く接している保残帯(約20ha)で調査を行なった。保残帯は人工林が造成された際の撹乱で種組成が変化したと考えられ、高木性樹種に比べ亜高木性樹種が多い。本研究では果実食鳥の密度や多様性、種組成がどのような要因に影響されているか、また鳥散布樹木群集の更新動態を明らかにすることを目的とした。
森林間で果実食鳥の多様性や種組成には大きな違いはなく、果実食鳥のうち積極的果実食鳥は保残帯で多かったが、機会依存的果実食鳥は違いはみられなかった。2006年は高木性樹種が凶作で亜高木性樹種が並作であり、保護林に比べ保残帯で全体の果実量が多かったために、果実食鳥が多く観察されたと考えられた。森林面積や人工林に接する割合は、果実食鳥の密度や多様性、種組成には大きな影響を与えておらず、主に果実量と渡りが果実食鳥の密度を決めていることが示唆された。森林間の果実量の違いほどには果実食鳥の密度に差はなく、散布される種子数は果実食鳥に制限されていた。鳥による持ち去り率(シードトラップで回収した種子のうち果肉が無いものの割合)を樹種内で比較すると、持ち去り率が高いほど種子は広域に散布されており、当年生実生の生存率も高くなる傾向がみられた。これらに加えて他の生活史段階での調査結果をもとに、鳥散布樹木群集の更新動態について考察する。