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一般講演(ポスター発表) P2-024
アリによる種子散布では、アリが巣から限られた範囲内でしか採餌をしないために、散布距離は鳥などによる種子散布に比べて短いことが知られている。アリが巣のみへ種子を運搬した場合、逆に巣周辺に種子が集中してしまうことが予測されるが、アリが巣の場所を頻繁に変えることで種子の集中を回避していることが考えられている。しかし、アリは種子の運搬中に種子を巣とは異なる場所に置くことや紛失することがある。この場合、ほとんどの種子は無傷で発芽可能な状態であり、巣周辺への種子の集中も軽減されることが期待されるため、植物の繁殖成功に大きく影響する可能性がある。そこで、野外のトビイロシワアリとオオズアリにコニシキソウの種子を運搬させ種子の紛失頻度や種子の行き先などの巣へ到達するまでの過程を調査した。また、アリへの報酬器官であるエライオソームを持たない種子がアリに運搬される食べ残し型の種子散布では、種子本体が食害され食べ残されたわずかな種子だけが繁殖成功に貢献するため、食害などの散布者の行動が繁殖成功に大きな影響を与える。そのため、人工巣を用いて種子の巣内への搬入や搬出および食害率を調査した。オオズアリでは巣までの種子運搬全体の約20%で種子を紛失したが、巣に搬入した種子の大部分は食害され、無傷で巣から搬出される種子はほとんど無かった。一方、トビイロシワアリでは種子が巣までの運搬中に紛失することはほとんどみられなかった。また、トビイロシワアリは巣内に搬入した種子の約30%しか食害せずに、約50%の種子を無傷で巣外に搬出した。そこで、人工巣を用いて種子が搬入されてから搬出されるまでの過程を追跡し、トビイロシワアリがほとんど食料としないコニシキソウの種子を運搬する原因を考察した。