| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-026
コナラ・シイ・マテバシイ属の樹木は秋から翌春にかけてドングリを捕食,貯蔵する齧歯類や鳥類に種子散布を依存している.なかでもアカネズミはドングリの捕食者・散布者として森林の更新に重要な役割を果たしている.そこで本研究では,アカネズミの社会的地位がドングリの消失速度,貯蔵方法,埋土深,空間的分布,および捕食率に与える影響について検証した.
調査は新潟大学構内のクロマツ人工林に1haの調査プロットを設置して行った.アカネズミの個体群構造を明らかにするため,2007年7~11月の計5回,連続4晩の記号放逐法で捕獲調査を行った.ドングリの消失速度を明らかにするため,磁石を埋め込んだマテバシイのドングリ50個を調査プロット内2ヶ所に設置し,持ち去ったアカネズミを自動撮影ビデオで個体識別した.その後,散布されたドングリの貯蔵方法,埋土深,空間的分布,および捕食率を明らかにするため,金属探知機を用いたドングリの追跡調査を行った.この調査を10月,11月,12月前半,および12月後半の計4回繰り返した.
ドングリは少なくとも4個体のアカネズミによって持ち去られた.各々の個体は活動量およびホームレンジが異なっていた.また,ドングリの散布方法,埋土深,空間的分布,および捕食率も異なっていた.これらの結果から,アカネズミの社会的地位が活動量やホームレンジの違いを介して貯蔵パターンに違いをもたらすと考えられた.