| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-029

鳥類の多様性を損なわない熱帯大規模植林は可能か?

*藤田素子(京大・生存研),Dewi Prawiradilaga(RCB・LIPI),吉村剛(京大・生存研)

インドネシア・スマトラ島では大規模アカシア植林が生息域の減少・改変を引き起こしている可能性がある.種多様性を維持するためには,ランドスケープ構造や管理方法を検討する必要がある.そこで本研究では鳥類を対象に,アカシア植林地の中に設けられた,保全二次林とアカシア林との多様性の違いを明らかにすることを目的とした.特に,種の供給源であると考えられる保全二次林からの距離やアカシアの林齢に応じた鳥類相の変化に着目して,アカシア林が鳥類相の維持環境として機能するための保全二次林の配置やアカシアの林齢を明らかにする.調査地はインドネシア・スマトラ島,南スマトラ州に位置するPT. Musi Hutan Persada社が所有する26万haのアカシア植林地とした.約3,000haの保全林内部4箇所,保全林からそれぞれ0.5km,1-2km,5-6km,10-15kmの距離にある0-1齢のアカシア林4箇所と4-5齢のアカシア林4箇所の計12箇所において,鳥類の調査を行った.鳥類の調査では,10分間のポイントカウント法により記録された半径25m以内の出現種は密度推定に,25m内外の出現種は鳥類相データとして用いた.また補足する目的で,ICレコーダーを用いてポイントカウントと同時に10分間の録音を行った.その結果,アカシア林に比べ保全林で種数が高く,特に0-1齢のアカシア林で低い傾向を示した.一部のアカシア林では種数が高かったが,25m以内の生息密度は非常に低いことから,アカシア林の周辺の混交植生に生息する種を記録したためと考えられる.また,保全林からの距離に応じた鳥類種数の変化は認められなかった.

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