| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-031
島嶼には内陸と異なる進化を遂げた島嶼固有の生物が多く存在する。伊豆諸島にも、固有の維管束植物が18種、21変種、1品種、2雑種認められており、これらの植物と人間との共存が望まれる。サクユリLilium auratum var. platyphyllum Bakerは伊豆諸島固有のヤマユリLilium auratum Lindleyの変種で、園芸品種の母種として、また、観賞用および食用として利用されている。大島では過去に食用および観賞用として、本種の自生個体が大規模に利用された記録がある。規模は不明であるが現在でも自生個体の利用を確認しており、人為的インパクトは環境変化とともにサクユリの個体群に対して影響を及ぼす可能性がある。本研究では、サクユリに影響する人為的インパクトを評価する際に必要な知見である個体群動態を明らかにするために、自生地における分布パターンを解明することを目的とした。
まず、大まかな分布の傾向を把握するための予備調査を2006年11月に行った。島内でも特にサクユリが多く見られた三原山外輪山(外側カルデラ)内の特別保護地区の西側に500m四方の調査区を設定し、本種の生育状況と周辺環境の関係を調べた。その結果、亜高木が優占する調査区には全く出現しなかったことから、本種は遷移初期の植生に依存して生育し、植生遷移が進行した場所は生育に適さないことが示唆された。そこで、2007年9月から11月にかけて対象地の全体に250mのメッシュを設定し、その中心点でサクユリの生育状況と周辺植生および基質を調査した。その結果、本種が生育できる環境は特別保護地区の中でも狭い地域に限られていた。本発表ではこれらの調査結果を解析し、本種の分布パターンの関係について報告する。