| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-032

里山ハビタットマップ作成における衛星画像の利活用に関する研究

高橋俊守(宇都宮大学),一ノ瀬友博(兵庫県立大学),加藤和弘(東京大学),大澤啓志(慶応大学),杉村尚(自然研)

近年里山は,絶滅の恐れがある生物が集中して分布する地域であることが知られている.一方で,里山における人間活動の低下等に伴って,鳥獣害による被害が深刻化している.こうした状況において,里山における野生生物の個体数や分布を予測する手法を確立することができれば,里山の保全や野生生物の管理に役立つことが期待できる.このためには,里山における野生生物の個体数や分布を規定する生態学的なプロセスとともに,これらにハビタットの空間構造がどのように関係しているかを明らかにすることが課題となる.筆者らは,空中写真と現地踏査によって,里山におけるハビタットの詳細な空間構造を,パッチ-マトリックスモデルを適用して記述するための効率的な手法を研究開発し,「ビオトープタイプ地図」として示した.この際に,ハビタットのタイプや,パッチ間の境界線,最小地図化単位の設定,あるいは労力的な制約がしばしば問題となった.また、対象とする生物種によって,最適な図化スケールが異なるため,任意のスケールで作成した地図がどの程度有効な情報を持ち得るかという点についても課題が残された.一般的にパッチ-マトリックスモデルでは,空間構造を明示的に表現することができるが,パッチのモザイクが複雑になればなる程,地図化には困難が伴う.ところが日本の里山は,樹林地,農地,集落が混在し,複雑な空間構造を呈していることも珍しくない.そこで本研究では,環境傾度概念を適用し,衛星画像を用いた複数の傾度分析によって,ハビタットの空間構造を示す手法に着目した.傾度分析の結果と,パッチ-マトリックスモデルによる地図を相互に比較するとともに,相補的に用いることを通じて,里山における効率的なハビタットマップの作成方法を模索した.

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