| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-036

長野県伊那市における児童の自然とのふれあい体験の変化

*木川紗由美・大窪久美子(信州大学農学部)

[目的]学童期の自然とのふれあい体験は様々な意味での人間形成に寄与するといわれているが,近年ではこれらの体験の減少や質的な変化が問題になっている。本研究では長野県伊那市を対象とし,立地条件の異なる地域における児童の自然とのふれあい体験(遊び)の実態を把握し,さらに親世代と比較することで,世代間での体験の変化を明らかにし,今後の課題について検討することを目的とした。

[調査方法](1)児童へのアンケート調査:伊那市(市街地2校と郊外4校の全児童)の児童1523人に学校を通して調査用紙を配布し,各自で記入してもらった。質問項目には自然とのふれあい体験だけでなく,遊び全般についてや,どこで誰とするか等を主に尋ねた。(2)保護者へのアンケート調査:対象児童の保護者に対して1298家庭に調査用紙を配布し,各自で記入してもらった。質問項目は保護者の学童期における遊び体験や,現在の地域環境等について尋ねた。(3)児童の遊びの実態を把握するため,6地域でルートを設定し,平日3日,休日2日間,踏査しながら遊びの種類や場所等を記録した。

[結果・考察]生物の世話をする頻度と外で遊ぶ時間数については,今の児童より昔の児童(保護者)の方が多かった(χ2乗検定:p<0.05)。習い事に費やす時間については,昔の児童より今の児童の方が、また郊外よりも市街地に住む児童の方が多かった。以上から,自然とのふれあい体験の機会は,市街地の児童、郊外の児童、昔の児童の順に多いことが把握できた。保護者へのアンケートから郊外と市街地では児童の(自然)遊びをすすめる上で異なった問題を抱えていることが明らかになり,両地域の親世代から「子供を安心して遊ばせることのできる地域づくり」に多くの要望があった。

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