| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-038

分光指標による群落スケールでの葉面積および葉内クロロフィル濃度の個別評価にむけての実験的検討

松本一穂, 太田岳史(名大院・生命農)

葉面積指数(LAI)と葉内クロロフィル濃度は植生の炭素固定量や蒸発散量の時空間分布を規定する重要な因子である。今後、広域の様々な植生の水・熱・炭素交換量を評価するためには、これら2因子を衛星によるリモートセンシングによって個別評価する必要がある。しかし、多くの分光指標はLAIと葉内クロロフィル濃度双方に対して相関関係を示すこともあり、これら2因子の個別評価手法は未だ確立されていない。

実際の植生ではLAIの変動と葉内クロロフィル濃度の変動は連続的に起こるため、それぞれの分光指標への影響を分離評価することは困難であると考えられる。そこで本研究では、LAIとクロロフィル濃度を人為的に個別変化させることが可能な植生群落模型を作製し、様々な条件下での植生表面の分光反射量を測定した。そして、複数の分光指標について、LAIとクロロフィル濃度の変動の影響がそれぞれどのように表れるのかを検討した。

解析の結果、植生指標として一般的なNDVIの値は、高LAI時は葉内クロロフィル濃度の違いに大きく依存し、LAIの値の変動には殆ど依存しないことが分かった。一方、LAIが低下するのに従って、NDVIの値はLAIの値に大きく依存するようになり、相対的に葉内クロロフィル濃度の違いには依存しなくなることが分かった。そのため、分光指標はLAIと葉内クロロフィル濃度双方の影響を受けるものの、条件によっては各因子のそれぞれの因子に対する寄与は変化することが示唆された。

日本生態学会