| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-039
セイヨウオオマルハナバチ(以下セイヨウ)は1991年の導入以降、ハウス施設内で使用されてきた。長期にわたる野外への逸出により、特に北海道では、野外で頻繁に観察されるようになり、在来生態系への様々な生態リスクが実証されてきた。2006年に本種は外来生物法における特定外来生物に指定され、野外への逸出は法律で禁止となった。しかし、北海道ではすでに定着に成功していることから、その自立的な個体群成長と分布拡大による個体群動態が注目される。本研究では、本種が野外でどのような環境に分布しているのかを分析することで、いかなる要因が本種の定着に影響しているのかを、それらの要因が影響する空間スケールを考慮し、検討することを目的とした。さらに、本種の使用量には道内の地域間で大きなばらつきがあることから、その違いによる影響にも注目した。導入以降の累積使用量が異なる道内5地域を対象に、セイヨウ個体の有無に対する、250mから3500mの14スケールにおける土地利用とセイヨウ使用ハウス数の影響を多重ロジスティック回帰分析によって解析した。データの空間的な独立性を保つため、野外調査を行った地点のうち、地点間の距離を考慮に入れながら無作為に選んだ地点のデータを用い、より説明力の高いモデルを選択させる試行を各スケール10000回繰り返した。その結果、土地利用では、周囲3kmの森林・牧草地・市街地が占める面積の割合がそれぞれ、セイヨウの有無に影響していることが示唆された。しかしながら、その影響は地域によって異なっていた。また、周囲のコロニー数もセイヨウの有無に影響しており、こちらも地域によって、異なる傾向が認められた。以上のことから、本種の野外での分布は地域によって、影響を受ける要因が異なり、特定地域での環境要素との関係をそのまま他の地域での分布予測に外挿することは難しいことが示唆された。