| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-045

住居地域から海岸クロマツ人工林への非在来植物の移住

*紙谷智彦,高橋佳菜子(新潟大・院・自然科学)

都市域に近い新たに造成された森林には,在来植物と非在来植物が共に定着している.近傍の「緑の多い住宅地」を非在来植物の種子源であるとみなして,森林に生育する非在来植物の出現頻度に及ぼす種子源の広がりや距離の効果について検証した.

調査を行った新潟市西区は,海岸線に沿って砂丘上に植栽されたクロマツ人工林がベルト状に連なり,その内陸側に住宅地や農地が広がる.このクロマツ林から1000m以内にある住居地域の距離と広がりに応じて,near/large, far/small, nothingの3カ所の調査サイトを設置した.また,クロマツ林に隣接した草地をopenサイトとした.これら4カ所の調査サイトそれぞれに5m×5mの高木コドラート100個と1m×1mの草本低木コドラート400個を設置し、各コドラート内に出現した植物の種名を記録した。

出現した植物は139種で,非在来植物は17種が出現し,そのうち12種が西南日本に分布する植物で,残りの5種は外来種であった.これらはすべて被食型散布であった.非在来植物の種数はnear/largeサイトで15種が出現し,他の2サイトに比べて有意に多かった.far/smallサイトには6種が,nothingサイトには2種が出現した.木本の出現頻度は,openサイトに比べて有意にクロマツ林で高く,逆に草本はopenサイトで高かった.

典型的な帰化植物は草本の攪乱依存種であるとされているが,クロマツ人工林に定着していた非在来種は住居地域から移住してきたと考えられる木本種であった.西南日本から移入された常緑の緑化植物が,冬季の最低気温上昇に伴い東北日本でも定着できる条件が整ってきている可能性がある.これらの中には常緑の高木種も含まれていることから,非在来種が優占すると,在来植物の生育と生存に負の影響を及ぼす可能性があるだろう.

日本生態学会