| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-046

常緑広葉樹8種の分布および優占を制限する気候条件

*中尾勝洋(東京農工大),松井哲哉(森林総研北海道),田中信行(森林総研),福嶋司(東京農工大)

常緑広葉性木本8種の分布、優占するための気候的な最適条件と潜在分布域を明らかにするために、対象種と気候要因との関係を統計モデルを用いて解析した。対象種は照葉樹林の主な林冠構成種である、スダジイ、コジイ、イスノキ、タブノキ、アカガシ、イチイガシ、シラカシ、ウラジロガシ、分布情報は植物社会学データベース(PRDB; Tanaka et al. 2005)を使用した。対象地域は北海道を除く日本全域である。対象種ごとに分布 (SP-model)と優占 (DO-model)の2つのモデルを、種のアル/ナシ(優占度3以上を優占とした)の2値変数を従属変数、気候要因(暖かさの指数、最寒月最低気温、夏期降水量、冬期降水量)を説明変数にClassification tree model (CTA; Breiman et al. 1984)により構築した。最適条件の解析ではPRDBに含まれるすべてのデータを使用し、潜在分布域ではデータをランダムに計算用(70%)と評価用(30%)に分割し予測する行程を100回繰り返した平均値から求めた。結果、すべての対象種で有効なモデルが得られた(AUC>0.8)。対象種の最適条件には、温度要因が大きく作用していたが、降雨要因との複合的な影響が重要だった。潜在分布域は、すべての対象種でSP-modelがDO-modelに比べ地理的に広かった。温暖で多雨な西日本の太平洋側が対象種に共通した潜在分布域であり、冬期降水量の多い日本海側で、イスノキ、アカガシ、イチイガシは分布が予測されなかった。さらに、少雨な瀬戸内沿岸域ではシラカシを除く種で出現確率が低かった。対象種の分布、優占の最適条件と潜在分布域は種間で異なるだけではく、種内でも異なることを定量的に明らかにした。

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