| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-048

GISとリモートセンシングを用いた竹林拡大域推定手法の提案

*谷垣悠介(徳島大・院・先端技術教育),鎌田麿人(徳島大・ソシオテクノサイエンス研究部)

モウソウチク,マダケ等が優占する竹林は,筍や竹材生産を主な目的として日本各地で広く植栽されており,里山景観の代表的な構成要素でもある.しかし,安価な外国産筍の輸入や竹材の需要の低下で国内の生産者は減少し,竹林の管理放棄が進んでいる.その結果,現在タケは旺盛な繁殖力で自然に分布域を広げつつある.そういった竹林で危惧される問題として (1)竹林の単純な林分構造や暗い林床のために生物多様性が減少する (2)田畑へ侵入すると駆除に手間がかかる (3)竹林にイノシシなど害獣が棲みつき周辺農地に被害がでる (4)タケ群落が増え過ぎて景観が悪化する,といったものが挙げられる.このような中,生物多様性国家戦略でも里山の自然の再生を重要課題としており,竹林の効率的な管理手法を構築することが急務となっている.

そこで,本研究では広域的な竹林管理計画の策定に役立てる事を目的とし,竹林が拡大し得る領域(拡大可能域)を推定するためのモデル構築を以下のように試みた.

まず竹林の拡大が問題となっている徳島県東部において,最新の 2003 年の衛星写真と竹の植栽がほぼ無くなった 1982 年の空中写真を判読し,各々の年の竹林分布図を作成した.つぎに,その二つの分布図と,斜面方位といった環境データ(10m DEM等より作成)を統計解析することで,竹林が拡大する環境要因を特定した.そして,竹林が拡大する環境要因を持つ領域を抽出し,潜在的な竹林拡大可能域を予測した.また,これに並行して 2003 年の衛星写真と教師データを用いて竹林分布を自動抽出する画像解析システムを構築し,広域の竹林分布域を特定した.最後にその竹林分布域を 2003 年以降の竹林の拡大源(source)とみなし,潜在的な竹林拡大可能域と重ね合わせることによって,竹林の拡大可能域を最終的に推定した.

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