| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-050

アマモ類の空間動態:パッチベースの景観指数の有効性

*山北剛久,仲岡雅裕(千葉大・理)

沿岸生態系の重要な要素であるアマモ場は、その二次元的な景観からRS/GISによる広域の空間解析に適する。生物が構成する景観構造の動態はセルベースとパッチベースの2つの手法で解析できる。前者は解析が容易だが生物学的プロセスと必ずしも対応しない。一方、後者は解析が複雑だが、生物-物理相互作用で形成された集合を対象とするためプロセスをより反映している。

演者らは千葉県富津干潟のアマモ場においてセルベースの手法で長期空間動態を研究した。その結果、(1)広域的には、水深が深く植生が密な場所と、水深が浅く砂による撹乱が影響する場所とで、藻場の面積が独立に変動し、特に両者が同調した場合に全体に急激な変化が起こること、(2)局所的には、隣接するアマモの効果が、植生の拡大過程では20m以下のスケールまで、縮小過程では30m以上のスケールまで作用することを明らかにした。このプロセスのスケールは、景観上で実際の相互作用単位であるパッチと対応していると考えられる。そこで、本研究では、アマモ場の空間動態をパッチベースで捉えることで、景観の動態とプロセスとの関係をより系統的に捉えることを目的とする。

パッチパターンがアマモ場の面積変化に及ぼす影響の簡便な検証手法として、航空写真から識別されたパッチの構造を、パッチのサイズ分布、面積/周長比をはじめとする複数の計測方法で示し、これらの景観指標がアマモ場の面積変化と関係するかについて比較した。

その結果、これらの景観指標はアマモ場の面積変化とは対応せず、独立した変化を示した。この結果はこれまで検出されたセルベースでの景観変化のプロセスからの予測と矛盾する。パッチ動態ではアマモ場の時系列変化パターンを捉えることは困難だろうか?

個々のパッチを追跡した結果と合わせ、広域の動態と局所のパターンとの関係をパッチ動態を通じて捉える方法について議論する。

日本生態学会