| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-051

多摩丘陵都市公園の二次林における樹洞の分布

*保母桂志(明治大・院・農)倉本宣(明治大・農)

樹洞での研究がなされるにつれ、これまでの森林施業では無益、有害なものとして排除されてきた樹洞木や立ち枯れ木が、森林生野生動物によって繁殖の場、ねぐら、休息場として利用されていることがわかってきた。そして森林生野生動物の中で樹洞を営巣目的で使用するものは樹洞営巣種と呼ばれ、これらの中にはキツツキ類など繁殖のために自ら樹洞を生産するものや、カラ類、コウモリ類など彼らの古巣を繁殖のために利用するものが存在する。そのため、樹洞数の少ない森林では樹洞の数が樹洞営巣種の繁殖個体数を決める要因となり、キツツキ類は樹洞を森林内に供給することから、他の樹洞営巣種の多様性の維持に重要な役割を果たしている。このような中で樹洞木や立ち枯れ木は、都市域における自然生態系や生物多様性にとって必要不可欠な存在である公園緑地においても、伐採せずに保存されてきている。そこで本研究では、都市公園内にどの程度樹洞木が分布しているのかの把握を試みた。2007年5月から12月にかけ、多摩丘陵内に位置する都立桜ヶ丘公園内の約18haの範囲を踏査し、樹洞木のプロットを行った。園内はコナラを主体とする二次林で、周囲は住宅地に囲まれた孤立林であり、アオゲラ、コゲラの2種類のキツツキが生息している。踏査範囲内でアオゲラの樹洞木37本(樹洞数47個)、コゲラの樹洞木91本(樹洞数147個)、自然樹洞木28本(樹洞数29個)を確認した。樹洞木の多くは樹林地内に存在し、アオゲラの樹洞木は比較的林縁にも分布していたが、完全なオープンスペースの樹木にはほとんど形成されていなかった。また内部を観察したアオゲラの樹洞32個のうち26個は作りかけで、残り6個のうち5個は木屑などで穴の大部分が埋まっていた。このことより大型の樹洞で、鳥類などが利用可能なものは非常に少ないことが伺えた。

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