| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-054
阿蘇山周辺では,毎年の人為的な野焼きによって広大なススキ草地が維持されている。ススキ草地はしばしば強雨によって表層崩壊が生じるが、それに対して外来種を用いた山腹緑化工が行われている。一般に再生した植物群落の質的評価は、目標とする群落を設定し、種組成を比較する方法がとられる。しかし、この方法は複数の異なる組成の植物群落が存在する流域を単位としてみた場合、恣意的な目標設定に陥りやすい。
本研究では、緑化工で再生された植生とその周辺地域の植生の開花フェノロジーに着目し、阿蘇外輪山の草地で1984年、1999年に施工された山腹工4ヶ所と、その流域内において種組成と開花フェノロジーの比較を行った。その結果、緑化に使用された外来植物は毎年の野焼きに適応していないために速やかに衰退する一方で、野焼きに適応している山腹工周囲の在来植物が山腹工内に侵入し,植物種の多様性は比較的回復していた。開花フェノロジーも周辺地域との同調が認められ,流域内と同程度に進行していると評価された。開花フェノロジーは人の季節感と近似し、景観修復の観点からも有効と考えられる。