| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-058
中国内蒙古では、過放牧や過度の伐採・耕作などにより砂漠化が進行している。中でも砂地と呼ばれる砂質の土壌が卓越した地域では、不適切な土地利用により砂丘の再活動が引き起こされ、植生の回復が妨げられている。そのため、同地域では植生を回復させるためのさまざまな対策がとられてきた。それらの対策技術を適用することにより植生がどのような回復過程をたどるかを明らかにすることは、今後最適かつ効果的な植生回復技術を選択する上で重要である。本研究では、植生回復技術として代表的な(1)禁牧のみ、(2)灌木(Artemisia.halodendron)植栽、(3)草方格設置を取り上げ、対策技術適用後11年間の植生・土壌の変化について調査し、各対策技術間の差異を比較した。
内蒙古自治区奈曼旗の流動砂丘上に、96年に禁牧柵を作成して試験区を設置し、その内部に上述の三処理区を設けた。処理区ごとに1m×1mの方形区を6箇所設置し、96年以降毎年植生調査を実施した。また、各処理区につき深さごとに土壌試料を採取し、理化学性分析を行った。植生変化の全体的傾向は以下のようなものであった。試験開始当初には流動砂丘上に生育可能な短命植物(アカザ科)が優占していたものの、年数の経過に伴い灌木の優占度が上昇した。とくに、本研究の植栽種であるA.halodendronの優占度の増加が顕著であった。他の草本についても潅木に続き徐々に優占度・種数の増加が見られた。各処理区について比較すると、草方格設置区では他の区に比べ灌木の優占度が低く、多様な種の侵入が確認された。また、土壌については有機炭素量・粘土シルト含有率ともにすべての処理区について改善があったが、草方格設置区での数値の増加が最も大きかった。以上のように、対策技術間で植生・土壌の回復パターンが異なることが示唆された。