| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-059

中国ホルチン砂地における耕地の管理・立地・作物種の違いによる土地荒廃パターンの比較‐土壌特性・雑草群落・作物生産性を指標として

*宮坂隆文,大黒俊哉,武内和彦(東大・農),趙哈林,趙学勇(中国科学院沙漠研究所)

中国北東部の半農半牧地帯に位置するホルチン砂地では,深刻な土地荒廃の主要因として過放牧とともに不適切な耕作活動があげられている.しかしながら,耕作地の荒廃に関する知見は不足しており,とくに管理や地形立地などにもとづく現行の耕作システムを踏まえた土地荒廃の実態は未解明である.本研究では,土壌特性,雑草群落,作物生産性を指標とし,ホルチン砂地の典型的な耕作システムがもたらす土地荒廃の特性を明らかにすることを目的とした.

地形立地,作物種,管理方法の観点から分類した3つの典型的耕作地タイプ(A,低平地のトウモロコシ畑(窒素・リン酸投入,灌漑なし);B,平砂地のトウモロコシ畑(窒素・リン酸投入,灌漑あり);C,砂丘地の豆類を中心とした輪作畑(リン酸のみ投入,灌漑なし))ごとに,履歴の明らかな耕作地を耕作年数別(耕作後1年,5年,10年,20年)に2〜3圃場ずつ選定,植生調査,土壌試料採取,作物刈り取り調査を行った.また,各耕作地タイプの耕作前の状態(耕作後0年)を対照区として,低平地,平砂地,砂丘地の草地それぞれ3箇所で植生調査と土壌試料採取を行った.

低平地における湿性の雑草群落や高いEC値は沖積地の立地環境を表していたが,EC以外の土壌特性ではタイプA,B間に差はなく,作物生産量はB>A>CとなりBの方が高かった.さらに,対照区で違いが認められたタイプB,Cの群落組成やリン酸値が耕地化により均一化したことから,灌漑や施肥などの人為的影響の強さが示唆された.また,全タイプでSOCと全窒素が耕作後5〜10年で大幅に低下,作物生産量もほぼ一貫して低下し,そのパターンもタイプ間で違いがみられたことは,対象地における現行の耕作システムの非持続性およびその違いによる土地荒廃パターンの相違を示していると考えられた.

日本生態学会