| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-060

里山の土地利用履歴とランドスケープレベルでの樹木の繁殖開始サイズ:更埴地方と屋久島の比較

*小林慶子(横浜国立大・院・環境情報),小池文人(横浜国立大・環境情報研究院),酒井暁子(横浜国立大・環境情報研究院)

里山の森林群集は、数百年以上に渡る伐採などの継続的な人為撹乱を受けてきた。一般に攪乱地には、繁殖開始サイズが小さく繁殖投資量が大きい種や、小さな成体サイズを持つ種、耐陰性が低く明るい場所で成長速度の速いパイオニア的な種などのr戦略種が多いとされる。しかし、里山は地域ごとに異なる土地利用歴を持つ景観であり、その撹乱歴は一様ではない。そのため、撹乱歴が変われば出現する種の特性も変わる可能性がある。

本研究は、里山としての土地利用の歴史が、群集レベルの種特性だけでなく、地域全体のフロラの生態的種特性の頻度分布を変えている可能性を検討する。古くから徹底的に利用された地域では、K戦略種が地域から消失しているかもしれない。

古くからの徹底した利用歴を持ち、遠隔地まで刈敷山として利用され極相林が残っていない長野県坂城町と、焼畑として利用され常緑広葉樹の薪炭林利用も多かったが、遠隔地や急傾斜地には極相林も維持されていた鹿児島県上屋久町椨川集落周辺において、1〜2kmの空間スケールでのランドスケープに出現する木本種の最大樹高・繁殖開始サイズ・耐陰性を測定した。

その結果、屋久島では耐陰性が低い種で相対繁殖開始サイズ(繁殖開始サイズ/最大サイズ)が小さく、r戦略種とK戦略種の傾向が明瞭であったのに対して、坂城では屋久島よりも1)フロラ全体の相対繁殖開始サイズが小さく、2)耐陰性の幅が少なく、3)r戦略とK戦略の分離が不明瞭であり、坂城のフロラはr戦略種に偏っていた。ただし、今後は落葉樹林帯でそれほど徹底的な攪乱を受けていない地域や、逆に照葉樹林帯で徹底して利用されてきた地域などと比較する必要もある。

日本生態学会