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一般講演(ポスター発表) P2-062
亜寒帯林の更新動態と樹種共存メカニズムを明らかにするために、北海道東大雪層雲峡付近に成立する原生状態の北方常緑針葉樹林で1999〜2000年に面積2ha(100×200m)の調査区を設定し、樹高≧0.3mのすべての幹を対象に毎木調査を行い、樹種、根元位置、樹高を記録し、胸高直径(DBH)≧1cmの幹については胸高周囲を測定し、2004年に再調査を行った。また、2000年と2004年に林冠状態を調査した。2000年の調査区内の樹高≧0.3mの出現本数は合計5676本/2haで、出現樹種はトドマツ、エゾマツ、アカエゾマツなど合計8種であった。また、全胸高断面積合計は47.5m2/haであった。ここでは幼木から成木段階の更新動態の把握を目的としてDBH≧1cmの幹を対象にデータ解析を行い、主要針葉樹3樹種についてのみ動態解析を行った。DBH≧1cmの出現本数は合計2008本/2haで、トドマツはその51.3%を占めていた。トドマツは下層では他2種より出現本数において優占していたが、林冠層ではトウヒ属が優占していた。各樹種の下層木と林冠木の死亡率はトドマツでやや高い傾向があったが、有意差はなかった。新規加入率(DBH≧1cmに成長)はトドマツで有意に高かった。ギャップと閉鎖林冠下の各樹種の相対成長率を比較した結果、林冠状態や樹種による成長量の差は検出されなかった。また、各樹種の空間分布と種間競争について解析を行った結果、下層ではトドマツとトウヒ属2種とは空間分布に正の相関があり、双方向的な競争関係が検出された。しかし、林冠ではほとんど種間競争は検出されず、空間分布はランダムまたは負の相関であった。以上から、北方常緑針葉樹林では樹種共存にギャップなどの撹乱の役割は小さく、生活史特性の違いによるニッチ分化が寄与していることが推測された。